先日(10月30日)、大阪産業創造館で開催された「ECサイト立ち上げと運用のための成功戦略」というセミナーで講師を務めさせていただきました。このセミナーは、大阪府が実施している「令和6年度新事業展開テイクオフ支援事業」の一環として開催されたものです。
テイクオフ支援事業は、社会情勢や経済動向が大きく変化する中で、新しい事業展開を目指す中小企業の挑戦を後押しする取り組み。補助金制度による支援だけでなく、新規事業立ち上げに必要なノウハウの提供も行っています。今回のセミナーでは、そうした新規事業の選択肢の一つとして、ECサイトの立ち上げから運用までの実践的な戦略についてお話しさせていただきました。
セミナーの反響は予想以上で、募集開始からわずか1週間で定員に達する事態に。これは、多くの企業がEC事業に可能性を感じながらも、具体的な進め方に悩んでいることの表れだと感じました。
私は20年以上にわたり中小企業のweb戦略をサポートしてきた経験から、「ECサイトは単なる通販システムではない」と感じています。
なぜECサイトは単なる通販システムではないのか
ECサイトは、お客様との大切な出会いの場であり、信頼関係を築いていく接点です。実店舗では当たり前のように行っている「接客」や「関係づくり」が、実はECサイトでも同じように重要なのです。
私たちがこれまでサポートしてきた数多くのECサイトの中で、収益化につながっているサイトには共通点があります。それは「お客様の立場で考え、お客様と向き合い続けている」ということです。
- お客様が求める情報をわかりやすく提供
- 商品の特徴や使い方を丁寧に説明
- 購入前の不安や疑問に親身に対応
- お届け後のフォローまでしっかりと実施
- 顧客の声を活かした継続的な改善
反対に、なかなか成果が出ないサイトの多くは「システムを作って終わり」、「とりあえず商品を並べておけばいい」という考えに留まっているケースが目立ちます。
そうしたサイトによくある特徴として、
- 商品説明が事務的で魅力が伝わらない
- 写真が少なく、商品のイメージがつかみにくい
- 問い合わせへの対応が遅い、または不十分
- 顧客からのフィードバックを活かせていない
- サイトの更新頻度が低く、鮮度が失われている
このような違いは、最終的な売上にも大きな差となって表れてきます。ECサイトは、システムや見た目の良さだけでなく、その向こうにいるお客様との関係づくりこそが、成功の鍵を握っています。
これは、実店舗での商売と同じです。
「お客様に喜んでいただきたい」、「より良い商品・サービスを提供したい」という想いがあってこそ、ECサイトは単なる通販システムから、「お店」へと進化していくと思っています。
今、企業が直面している課題
社会情勢や経済の動向が大きく変化する中で、多くの企業が新しい事業の柱を模索し、EC事業への関心は確実に高まっています。
しかし、同時に多くの企業が以下のような課題に直面しています。
- 「ECサイトを始めたいけれど、何から手をつければいいのか分からない」
- 「サイトは作ったものの、思うように売上が上がらない」
- 「運営の効率化やコスト削減の方法が分からない」
これらの課題の背景には、EC事業特有の難しさがあります。例えば、実店舗であれば自然と身についていく「お客様の反応を見ながらの接客」や「商品の見せ方」が、ECサイトではまったく異なるアプローチが必要になります。
また、初めてEC事業に取り組む企業の多くは、以下のような状況で悩みを抱えています。
サイトの構築段階
- どんなシステムを選べばいいのか
- いくらくらいの予算が必要なのか
- どんな機能を備えるべきなのか
運営を開始して
- 商品をどう見せれば魅力が伝わるのか
- どうやってお客様を集めればいいのか
- 問い合わせにどう対応すればいいのか
継続的な運営において
- 在庫管理をどうすればいいのか
- 効率的な発送の仕組みをどう作るか
- リピーターをどう増やしていくか
こうした課題の多くは、実は「やり方が分からない」というものです。正しい知識とノウハウがあれば、決して越えられない壁ではありません。大切なのは、これらの課題をそのまま放置にしておくのではなく、一つ一つ向き合って取り組み、着実に解決していく姿勢が重要です。
セミナーの内容
今回のセミナーでは、こうした課題に対する具体的な解決策を、6つのステップとして体系化してお伝えしました。
- お客様を知り、商品価値を理解する
- お客様目線でサイトを設計する
- 使いやすく魅力的なサイトを構築する
- 効果的な運用と集客を行う
- データを基に継続的に改善する
- お客様との関係を深め、継続する
これらは単なる手順ではなく、どのステップでも「お客様との関係づくり」を意識することが重要だとお伝えしました。
例えば、「お客様を知る」というステップでは、単にターゲット層を決めるだけでなく、その方々がどんな課題を持っているのか、何を求めているのかを深く理解すること。「サイト設計」では、商品をどう並べるかだけでなく、お客様の目線で「探しやすさ」「分かりやすさ」を徹底的に追求すること。「運用と集客」では、広告を出すだけでなく、お客様にとって価値のある情報を継続的に発信していくこと。
そして特に重視したのが、「改善」と「続ける」のステップです。ECサイトは作って終わりではありません。お客様の声に耳を傾け、データを分析し、より良いサイトへと進化させていく。そうした継続的な改善があってこそ、お客様との信頼関係も深まっていくのです。
セミナーでは各ステップについて、実際の事例を交えながら詳しく解説させていただきました。こうした内容は、すべて実践で得た経験から導き出したもので、すぐに活用できるノウハウとしてお伝えしました。
セミナースライドの抜粋版
参加者の皆様の反応
参加者の皆様からは、私たちの予想を超える反応を頂戴しました。
特に印象的だったのは、業種も規模も異なる様々な企業の方々が、共通の課題意識を持って熱心にセミナーに参加してくださったことです。予定時間を超過しても誰一人として途中退席されることなく、最後まで真剣に受講していただけました。
アンケートでも、全参加者から「満足」以上の評価をいただき、以下のような声が寄せられました。
- 「明日から実践できる具体的な施策が学べた」
- 「ECサイトの本質が理解できた」
- 「自社の課題が明確になった」
これからのEC事業支援に向けて
今回のセミナーを通じて、改めて感じたことがあります。それは、EC事業の成功には「技術」と「心」の両方が必要だということ。システムを構築することはゴールではなく、むしろスタート地点なのです。
私たちは今後も、以下の支援を強化していきます。
1. より実践的な支援の提供
- 業種・規模に応じた戦略立案
- 具体的な数値目標の設定と達成支援
- 運用体制の構築サポート
2. 継続的なフォローアップ
- 定期的な改善提案
- 最新トレンドの情報提供
- 成功事例の共有
EC事業成功への私たちの想い
今、多くの企業がEC事業に可能性を感じながらも、一歩を踏み出せずにいます。また、すでに始めているものの、思うような成果が出ていない企業も少なくありません。
しかし、ECサイトは決して難しいものではありません。大切なのは、実店舗と同じように「お客様の立場に立って考える」、「誠実に向き合う」、「継続的に改善する」という基本的な取り組みです。
最新のテクニックや流行のSNS、大きな投資も確かに重要かもしれません。でも、それ以上に重要なのは、お客様としっかりと向き合った関係づくりなのです。今回のセミナーで、その想いが参加者の皆様にしっかりと伝わったことを、とても嬉しく思っています。
今後の展開
このセミナーでお伝えした内容は、以下のページでも詳しくご紹介いただいています。
当社は、これからもEC事業に取り組む企業の皆様の成長をサポートしてまいります。「ECサイトを始めたい」、「もっと効果的な運営方法を知りたい」など、お困りごとがありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
今回のセミナーで得られた気づきと、参加者の皆様からいただいた貴重なご意見を活かし、これからも、より良い支援を提供できるよう、中小企業の支援に取り組んでいきたいと思います。